北米オケの音楽監督候補たち(4)フォートウェイン・フィル

 次はインディアナ州のフォートウェイン・フィルハーモニックです。日本ではなじみの少ないオケだと思いますが、1944年創設で、初代音楽監督はハンス・シュヴィーガー、2代目がイーゴリ・ブケトフと、結構名のある人が就任しています。2008年6月に、エドヴァルド・チフジェル(レニングラード・フィルでムラヴィンスキーの副指揮者をしていた人)が辞めてから音楽監督は空席で、ボリビアのヴァイオリニスト兼指揮者ハイメ・ラレードがミュージック・アドヴァイザー、ナイアガラ響の候補者でもあるブラドリー・サチャックが副指揮者を務めています。

ここは275人の応募者から8人の最終候補を選びました。こちらの記事に選考方法がかなり具体的に書かれています。これによると、275人の応募者の中から、まず書類審査で100人に絞られました。そしてその100人には実際に指揮をしているビデオを送るよう求められ、そのビデオと経歴照会(reference check)によって、20人になり、その20人への電話面接によって最終候補の8人が選ばれたとのことです。

この8人は、それぞれ2回のコンサートを振ります。審査はプログラミングの段階から始まっていて、候補者たちは、あらかじめ決まっている独奏者に合わせて、1回の演奏会につきそれぞれ3つずつのプログラムを組んで提出します。オケのスタッフとミュージック・アドヴァイザーのラレードが、シーズン全体のバランスを考えて調整し、最終的なプログラムが決定します。演奏会後には聴衆と楽員にアンケートが行われます。その他、楽員たち及び選考委員会メンバーとの長い面接、リハーサルの様子、委員会メンバーやスタッフとの食事などもしなければなりません。地元放送局や新聞のインタビューもあります。選ぶ方も選ばれる方も大変ですねえ。

エレーヌ・ブシェ HELENE BOUCHEZ
http://www.cirm-manca.org/fiche-artiste.php?ar=84
http://fr.wikipedia.org/wiki/H%C3%A9l%C3%A8ne_Bouchez

 1973年パリ生まれ、活動の本拠はフランスで、国立リヨン高等音楽舞踊大学助教授です。リヨン交響楽団、リヨン・クロード・ベルナール大学管弦楽団の指揮者などを務めました。2003年東京国際音楽コンクール指揮部門のファイナリストで、新日本フィルを振ったそうです。


デイヴィッド・インジェ・チョ DAVID IN-JAE CHO
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2001/00755/contents/00009.htm
http://music.rice.edu/news/david_cho.html

 1973年韓国ソウル生まれ、1985年に渡米、スパーノ、小澤、プレヴィンに師事したほか、パヌラとサロネンのマスタークラスも受けています。第3回エドゥアルド・マータ指揮者コンクール優勝。現在はユタ響副指揮者です。


アンドリュー・コンスタンティン ANDREW CONSTANTINE
http://www.andrewconstantine.com/
http://www.readingsymphony.org/musicdirector.asp
http://ml.naxos.jp/artist/31535

 1960年英国生まれ、シエナのアカデミア・チギアーナとサンクトペテルブルグ音楽院でムーシンに師事、これまで客演したオケは、ロンドン・フィル、ハレ管、ロイヤル・フィル、イギリス室内管、サンクトペテルブルグ・フィル、ソフィア・フィル、ベルリン・コーミッシェ・オーパーなど。ナクソスにマリア・クリーゲル及びイリヤ・カーレルの伴奏で、ブラームスの二重奏曲とシューマンのチェロ協奏曲を録音しています。現在はペンシルヴァニア州リーディング響音楽監督及びシンフォニア・オブ・バーミンガム首席指揮者。


アンドリュー・グラムズ ANDREW GRAMS
http://www.clevelandorchestra.com/html/about/Andrew.Grams.asp

 1976年メリーランド州生まれ。17歳のときにワールド・ユース響を振って指揮デビュー。クリーヴランド管副指揮者で、定期も振っています。2002年から2004年はリーディング響副指揮者だったそうなので、上のコンスタンティンの下にいたのでしょうか。ヴァイオリニストとしても活動していて、かつてはニューヨーク・シティ・バレエ管のメンバーでした。


ダニエル・マイヤー DANIEL MEYER
 1971年クリーヴィランド生まれ。リッチモンド響フェアファクス響に続き3度目の登場ですね。そちらをごらんください。


ティト・ムニョス TITO MUNOZ
http://www.titomunoz.com/
http://en.wikipedia.org/wiki/Tito_Mu%C3%B1oz

 1983年ニューヨーク生まれ。2007年からクリーヴランド管副指揮者ということなので、グラムズの同僚でしょうか。かつてはシンシナティ響及びシンシナティ室内管副指揮者でした。これまでワシントン・ナショナル響、クリーヴランド管、シンシナティ響(ペンデレツキの代役)、インディアナポリス響、デトロイト響などを指揮しています。


ダナイル・ラチェフ DANAIL RACHEV

 1970年ブルガリア・シュメン出身で、フィラデルフィア管副指揮者だったラチェフは、オレゴン州ユージン響の音楽監督(ルイヴィルの7人の一人で、ナッシュヴィル響に転出するジャンカルロ・ゲレロの後任)になることが決まったので、選考を辞退しました。ラチェフが振る予定だった演奏会は、副指揮者のサチャックが代わって指揮します。


グレゴリー・ヴァイダ GREGORY VAJDA

 1973年ブダペスト生まれ。この人は前回のフェアファクスで取り上げたばかりです。


 マイヤーやヴァイダのように、他で最終候補に残っている人がこちらでも、というケースは、やっぱりそれだけ審査員の目を引く何かがあるということなんでしょうね。