2017年コンサートベスト10

今年はすごかったですね。充実してました。

1位
5/14 サロネン指揮 フィルハーモニア
マーラー

2位
11/23 カンブルラン 読響
アッシジ聖フランシスコ

3位
2/18 井上道義指揮 大阪フィル
ショスタコーヴィチ11&12

4位
10/9 シャイー指揮 ルツェルン祝祭管
R・シュトラウス

5位
3/25 広上淳一 指揮 京響
マーラー

6位
10/20 エリシュカ指揮 大阪フィル
ドヴォルザーク

7位
7/28 インバル指揮 大阪フィル
マーラー

8位
10/14 イブラギモヴァ&ティベルギアン
シューベルト

9位
11/10 服部百音

10位
7/16 スラットキン指揮 デトロイト響&小曽根真
ガーシュウィン コープランド

2016年コンサートベスト10(+2)

今年も振り返ってみるといろいろいいものが聴けたなという感じです。

1位
11/5 Sat 京都コンサートホール ブロムシュテット指揮 バンベルクso. 諏訪内(vn) 運命ほか

2位
6/5 Sun 兵庫芸文 クレーメル&ドゥバルグ
インベルク、ショスタコーヴィチほか

3位
2/20 Sat 兵庫芸文 ジャニーヌ・ヤンセン

4位
8/19 Fri 京都 沼尻指揮 京響

5位
10/29 兵庫芸文 ヴェデルニコフPAC クニャーゼフ
ショスタコーヴィチ10

6位
3/12 土 高関指揮京響 マーラー6

7位
11/23 Wed 祝 兵庫芸文 ヤンソンスBRSO マーラー9

8位
4/9 兵庫芸文 キアロスクーロ カルテット
死と乙女ほか

9位
10/1 Sat 兵庫芸文 カツァリス(pf)

10位
12/8 Thu ザ・シンフォニーH 寺岡指揮 大阪響 人魚姫 コルンゴルト

<別格>
その1
4/8 Fri 19:00 ロームシアター京都 ブゾーニレクチャーコンサート

その2
1/16-22 METLive ベルク「ルル」

本サイトはFC2に移転します

下で、本サイトの方を休止するとお伝えしたばかりですが、沼辺さんのありがたいコメントに勇気づけられて、FC2に移転しました。無料で簡単なので、CDを1枚聞き終わる前に全部終わりました。新しいURLは次の通りです。

http://hayesmid.web.fc2.com/index.html

ロストロポーヴィチのBrilliant箱はここにあります。
http://hayesmid.web.fc2.com/other/slava_brilliant.html

全自動音楽評論ジェネレータ功芳くん(RIP)はここに。
http://hayesmid.web.fc2.com/other/archive/koho.html

なお、この機会に内容が古くなったページやCGIを使ったページは削ろうと思います。
indexのページもそれに合わせて調整する予定ですが、今はそのままなのでリンク切れなどが多くて見づらくなっています。すみません。

ちなみに聴いていたCDはこれです。シャロン・ベザリー(fl) 今井信子(vl) ロナルド・ブラウティガム(hp)のデュリュフレ、アーン、ヴァインベルク、ニコラーエヴァ。最高ですね。

本サイトの方をしばらく休止します

本サイトの方(http://hayes.cside2.jp)でサーバー料金を払う時期がやってきたんですが、特に交流も反応もないサイトに年間9000円払うのはもったいない気がしますので、今年は更新しないことにしました。ということで、URLがhttp://hayes.cside2.jpのページは6月末で終わりになります。無料のサーバーでいいところが見つかれば復活するかもしれませんが、全然調べていませんのでわかりません。こちらのブログとかはてなブックマークは残ります。

2016-04-08 ブゾーニ生誕150周年記念レクチャーコンサート〜

新発見のブゾーニ自筆の風刺画と聴く
フェルッチョ・ブゾーニの世界
ブゾーニ生誕150周年記念レクチャーコンサート〜
http://busoni150.jimdo.com/

2016年4月8日(金)18:30開場、19:00開演
ロームシアター京都(京都市左京区岡崎最勝寺町13)ノースホール

出演
井村 理子(ピアノ)
北岡 羽衣(クラリネット
畑野 小百合(お話)

オール・ブゾーニ・プログラム(お話つき)
 カルメン幻想曲(ソナチネ第6番) BV 284
 バッハ=ブゾーニ コラール前奏曲「目覚めよ、と呼ぶ声あり」 BWV 645
実演付きレクチャー
 「検証! ブゾーニ版 J. S. バッハ《ゴルトベルク変奏曲BWV 988の魅力」
クラリネット&ピアノ
 ソロ・ドラマティック BV 101
 ノヴェレッテ BV 116
 エレジー BV 286
 ソナチネ第2番 BV 259
<アンコール>
 不機嫌の歌(ゲーテ詞)…クラリネットとピアノのための編曲

 いやー、120分間、ブゾーニの作品の演奏とブゾーニについてのお話だけという、夢のようなコンサートでした。ロームシアター京都の地下2階にあるノースホール(小ホール)でのコンサートで、席数は100ぐらいかと思いますが結構埋まっていました。畑野さんは、ベルリン芸術大学の博士課程に在学、ヘルマン・ヴォルフ音楽事務所についての博士論文を執筆中とのことです。今回は、新発見のブゾーニ直筆の風刺画も展示されました。
http://micro.rohm.com/jp/rmf/blog/category/syougakusei-report/%E7%95%91%E9%87%8E-%E5%B0%8F%E7%99%BE%E5%90%88%E3%81%95%E3%82%93ms-sayuri-hatano/

 《カルメン幻想曲》の演奏に続いて、畑野さんによる、ブゾーニという音楽家についてのお話。知らないことだらけで驚きの連続でした。ブゾーニの息子ラファエロは日本人のヒデという女性と結婚していたが、彼女は晩年のブゾーニとは折り合いが悪く、ブゾーニが「むっつりとした仏陀のような女だ」と言ってたとか。彼女、ヒデ・ブゾーニのパスポートも見せてくださいましたが、写真ではかなり現代的な顔に見えました。ヒデもピアニストとのことで、おそらく日本で生まれ育った日本人ではないのではないかとのことでしたが、さもありなんと思います。
 続いて《ゴールドベルク変奏曲》の解説。これは、まず全体の構成の違いを紹介し、次に、特徴的ないくつかの変奏を、楽譜をスライドで見せながら解説し、部分的に井村さんのピアノで聞き比べるというものでした。こうやって解説とともに聴くと、ブゾーニの一貫した編曲意図、ブゾーニのこの作品の捉え方、そして現代のわれわれとの感覚の違いなどが浮彫になって、これも非常に面白かったです。

 後半は、クラリネットとピアノの二重奏ではじまりました。3曲とも非常に珍しく、まさか生で聴けるとは思わなかった曲ばかりだったんですが、晩年の《エレジー》がやはり一番いいですね。
 次に風刺画の解説。絵は、ブゾーニと大きなザリガニが対話しているというものです。これはブゾーニの前衛性について批判した批評家カール・クレープスを、後ろにしか進めず、ハサミと甲羅はもっていても耳のないザリガニ(Krebsにはザリガニの意味もある)に見立てて皮肉ったものです。畑野さんは、ベルリン・フィルの設立、運営にも大きな影響のあった非常に重要な音楽エージェントである、へルマン・ヴォルフ音楽事務所について研究されているのですが、これはアメリカにいるヴォルフの子孫を訪ねたときに、その人に見せられたものだそうです。畑野さんが「これはブゾーニの直筆です」と興奮していると、You can take it. 「持って帰っていいよ」と言われ、何度も確認したうえで譲り受けたとのことでした。音楽家が批評家の悪口を言うのは珍しいことではないですが、これはその中でも傑作じゃないでしょうか。
 最後はピアノ独奏に戻り、ブゾーニの実験性がよく出た作品としてソナチネ第2番が演奏されました。例のファウスト博士の悪魔召喚のところでも出てくる曲ですが、井村さんの演奏、非常に熱のこもったものですばらしかったです。
 アンコールとして、ゲーテの詞による歌曲《不機嫌の歌》がクラリネットとピアノの編曲で。これも貴重です。クラリネットがとても表現力豊かで、本当に声みたいでした。こういうコンサート、東京では結構やっていると思うんですが、関西では少ないので、ありがたいです。畑野さん、井村さん、北岡さん、ロームさん、ありがとう!聴けてよかった!

アーノンクール イン 京都(第21回京都賞記念ワークショップ)再掲載

アーノンクールが無くなりましたね。私は結局京都賞のワークショップが唯一の生演奏体験となりました。でもこれは本当に面白かったです。再掲しておきます。

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アーノンクール イン 京都(第21回京都賞記念ワークショップ)

 ニコラウス・アーノンクールが第21回京都賞を受賞しまして,「アーノンクール イン 京都」というワークショップが京都国際会館で行われました(11月12日土曜日13:00-17:00)。行ってきましたがな京都まで。面白かったですよ。ということで内容を少しメモしておきます。私はアーノンクールの著書も読んでいないし,ピリオド奏法については全然うといので間違ってたらごめんなさい。たぶんなんか間違ってると思いますが。

 前半は講演とシンポジウム。まずアーノンクールが話をして,それに対してパネリスト(鈴木雅明,樋口隆一,荒川恒子)がコメントと質問をするというものでした。アーノンクールの講演は『楽譜の魔力 The Charm of Musical Notation』というタイトルだったんですが,バッハやモーツァルトの楽譜の表記を実際にどのように演奏すべきかというかなり具体的な話が多かったです。

 強調していたのは「楽譜をそのまま演奏したのではいけない」ということでした。例えば,バッハで通奏低音全音符が書いてあったとしても,それを小節いっぱいだらーと伸ばしてはダメ,低弦もアタックのあとすぐに減衰すること。そして,受難曲などのレシタティーフについても楽譜通りの音価ではなく,その言葉の発音に即したリズムで歌わねばならないということ。それから,モーツァルトでは,スタカートの点があっても,それは「ここはスラーではない」という意味にすぎないので,短く切って演奏すべきではない,ということ。これらを,当時の理論書や教本を根拠に,実例に即して話してくれました。低音の奏法については,樋口さんが「違う考え方もある」と言ったところ「誰が言っているのか。それは正しくない。」とかなり強く否定してたのが印象的でした。

 その後,パネリストの3氏と会場からの質問(事前に書いたものを司会の伊東信宏氏が紹介)に対する答えだったんですが,鈴木雅明さんの「最近アーノンクールさんは19世紀や20世紀の作品も演奏されているが,例えば減七の和音が当たり前に使われるロマン派以降の音楽を演奏したあと,バロック音楽を演奏するとき,そういう和音が非常に刺激的な不協和音として使われるバロックの和声感を取り戻すのに苦労しないか」という質問が面白かったです。アーノンクール氏の答えは「午前中にバッハ,午後にブラームスというようなことはできないけれど,何日か空けば切り替えられる」というものでした。会場からの「今後の予定は?」という質問に,司会の伊東氏が「ストラヴィンスキーバルトーク,ベルクなども振りたいとのことですが」と水を向けると「その通りです。レイクス・プログレス,ヴォツェック,ルルなどを」とのこと。これは楽しみですね。

 それから,これも伊東さんが紹介しておられたんですが,昨日(11日)に行われた講演の中にあった,指揮デビューの話というのが面白かったです。アーノンクールの指揮者としてのデビューはなんとミラノ・スカラ座だったのですが,これは,スカラ座の人が,生演奏を聴いたのではなく,「ニコラウス・アーノンクール指揮」と書いてあるレコードを見て招聘したのだそうですが,実際にはアーノンクールはチェロを弾いていたわけで,楽器を持たない「指揮者」としてのデビューはそのスカラ座での公演だったとのこと。

 30分の休憩をはさんで後半は京都フィルハーモニー合奏団を相手に公開演奏指導。曲はモーツァルト交響曲第33番で、第1、2楽章だけでしたがこれが面白かったです。なお、ドイツ語の通訳として樋口氏もステージに出ておられましたが、結局アーノンクールは終始英語を使っており、樋口さんは英語から日本語への通訳に。

 まずは第1楽章、これはスタカートの奏法(点のスタカートは「スラーではない」という意味、くさび形のスタカートは短く切る)についての注意があったぐらいでほぼ通して演奏。その後第2楽章へ。こちらはそれぞれの部分をかなり細かくやったのですが、「これはピエロとピエレット(ピエロの女性版)の物語なんだ」と、具体的なイメージをたくさん使って説明していたのが面白かったです。例えば冒頭、強弱のコントラストをかなり大きくつけるように指示していたのですが、これを「音の大きいところは堂々と誇らしげにしているんだけど、すぐに自信をなくして小さくなる」というように(実際にこう言ってはいなかったと思いますが、だいたいそういうようなことです。録音してたわけじゃないので…。)身振りをまじえてユーモラスに説明、第1vnの甘いメロディ(19小節からのハ短調の旋律)は「彼女はなんと美しいんだろう」それに対する他の弦の合いの手は「そうそう」という感じで、とか、「ここはカタストロフだから低弦は強く(18小節)」とか「ここははじめての幸せ(27小節からの変ロ長調)「ここはキス(31,32小節の第2vnとvl, 35,36,37小節のob)」とか、そんな調子。最後の部分は「ここは冒頭と同じ事をやっているけど、前と同じではなくて、古いアルバムを見ているような感じ、終わりのところはドアを閉めて去っていくようにできるだけソフトに、聴いてる人はどういう風に終わるかみんな知ってるんだから,聞こえないぐらいでもいい,とか。終わりのところは「ここはヨーデルだ(87,89,91小節のヴァイオリン)」とも言ってました。

 もちろんこういう比喩ばかりじゃなくて、音楽的な指示もありました。中間のカノンのところ(45小節〜)では、第1vnを追いかける第2vnに「これは伴奏じゃない。第1vnを邪魔するぐらいに弾いてくれ」とか、「ここの弦のタタタタタ…というのは(67小節〜)管楽器に対するヴィブラートのように」とか。でもやっぱりこういうイメージの説明は印象に残りますね。あと、ユーモアというのをかなり重視してました「ここは客が笑うぐらいに」とか「ここはユーモラスに、今みたいにアカデミックにやったら、ほら(と客席を向いて)、誰も笑ってないでしょう。」(51小節からの管楽器)とか。

 その後第1楽章に戻ってもう一度やったんですが、今度はこちらも比喩が多かったですね。冒頭の主題(この楽章の主題は2つではなく10〜13あるとも言ってました)は父親の強い調子の言葉で、同じ音型が繰り返されるところは「昨日も遅かった!おとといも遅かった!その前も遅かった!」みたいに、ちょっと安堵したようなところでは「お父さんやっと寝た」みたいに、とか。具体的な奏法についてでは「fpはフォルテからピアノに急激に減衰するのではなく、フォルテからディミヌエンドしてピアノになるんだ」とか「シンコペーションは必ずダウンボウで」というようなことを。

 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとかWPh相手にも全く同じようにやってるのかどうかはわかりませんが、アーノンクールがこういうリハーサルをやってるっていうのはちょっと意外でしたね。でも、結構好きです、こういう音楽の捉え方。

 あ、奏法のことでもう一つ思い出しましたが、前半のシンポジウムで、バッハのアーティキュレーションについて面白い話が出ていました。バッハの時代に作曲家がアーティキュレーションの指示を書き込むということはあまり多くなかったのですが、ロ短調ミサ(だったと思う)には、バッハ自身がアーティキュレーションを書き込んだパート譜が複数あるんだそうです。で、こういう場合どちらを採るべきか、という問題について、アーノンクール氏は「これは、バッハ自身そのアーティキュレーションを絶対的なものだと見なしていなかったという証拠だ。つまりどちらも正しいのだ。」と言ってました。モーツァルトのリハーサルでも「音符が均等に書かれているからといって均等に演奏してはいけない」というのを何度も言ってましたし、アーノンクールの音楽観を簡単に言うと「バロックや古典派の楽譜を、19世紀以降の楽譜に対するときのように、杓子定規に演奏してはいけない。なにより大事なのは音楽のメッセージ(Botschaft という言葉を使っていました)を受け取ることである。」ということのようです。これはある意味、19世紀生まれのローマンティシュな大指揮者たちの考え方に共通するところもあるように思えて面白かったです。

 なお、繰り返しますが、これはごく簡単なメモと記憶に基づいて書いたものなので、あちこち間違いもあると思います。引用などされる場合はくれぐれもご注意を。以前は京都賞のあとは講演やシンポジウムの記録が『音楽芸術』誌に載ってたんですが、あの雑誌が休刊になってからはどうなってるんでしょう?