北米オケの音楽監督候補たち(2) リッチモンド響

 さて、ナイアガラ響に続く第2回は、バージニア州の州都リッチモンド市にあるリッチモンド交響楽団です。1957年に創設されたこのオケは、音楽監督を10年務めてきたマーク・ラッセル・スミスが2008-9年シーズンの終わりに退任するのに伴い、新音楽監督を選ぶことになりました。応募者は250人から9人に絞り込まれ、このうち6人が2008-9年シーズンに、残りの3人は2009年秋にリッチモンドを訪れ、同オケを指揮します。

ミハイル・アグレスト Mikhail Agrest
http://www.intermusica.co.uk/artists/conductor/mikhail-agrest/biography
http://www.youtube.com/watch?v=OuJ6ZkNsI8o
リッチモンド響による紹介)
 1975年ロシアのサンクトペテルブルグ生まれで1989年に米国に来たアグレストは、インディアナ大学でギンゴールドに師事、ペテルブルグに戻ってムーシンとヤンソンスに指揮を学び、アスペン音楽祭のアメリカン・コンダクティング・アカデミーではフェローシップを得てパヌラとジンマンに師事しました。ペドロッティ国際コンクール(2001)やミトロプーロス指揮コンクール(2002)に入賞、すでにライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、BBC響、フランス放送フィル、ストックホルム・フィル、メトロポリタン歌劇場、コヴェントガーデンなどに客演しています。すでに日本にも来てマリインスキー・バレエとか読響(フリューベック=デ=ブルゴスの代役)とか振ってるようです。

ダニエル・マイヤー Daniel Meyer
http://www.pittsburghsymphony.org/pghsymph.nsf/bios/daniel+meyer
http://www.youtube.com/watch?v=ULdKyyOrQR4

 クリーヴランド生まれ、ピッツバーグ響のレジデント・コンダクターでピッツバーグ・ユース響音楽監督、最近アッシュヴィル響及びエリー・フィル音楽監督として契約。2002年アスペン音楽祭アスペン指揮賞を受賞。クリーヴランド管、ユタ響、フォートワース響などを指揮。ちなみにエリー・フィルは大植英次ミネソタ管の前にいたところですね。

ティーヴン・スミス Steven Smith
http://www.sf-symphony.org/steven.htm
http://www.clevelandorchestra.com/html/about/Steven.Smith.Main.asp

 オハイオ州トレド生まれ、1999年からサンタ・フェ響音楽監督、他にクリーヴランド室内管音楽監督、また1997-2003年にはクリーヴランド管副指揮者を務めました。客演はデトロイト響、ヒューストン響、台湾国立響、香港フィルなど。ありふれた名前なので、検索してもなかなか情報が出てこない人です。

マーク・タッデイ Marc Taddei
http://www.trustcds.com/pages/artists/Taddei.html
http://www.youtube.com/watch?v=g-pYBeFd804
ニュージーランドのテレビ番組)

 2001年からニュージーランドクライストチャーチ音楽監督、そのあと2007年からは同国のヴェクター・ウェリントン音楽監督。香港、オレゴンニューオーリンズメルボルン響などでも指揮。ソニー、BMG、コロムビアニュージーランドのローカル・リリースのようです)に録音があります。クライストチャーチの前はニュージーランド響の首席トロンボーン奏者を14年やっていたそうです。

アーサー・ポスト Arthur Post
http://www.portlandsymphony.com/module-People-display-sid-33.html

 ニューメキシコ州ファーミントン及びコロラド州デュランゴを本拠地とするサンファン響音楽監督。1994-97年ピッツバーグ響で、最初は副指揮者、その後レジデント・コンダクター、97-99年にはメータのもとでイスラエル・フィル副指揮者、その他ヘルシンキ・フィル、ベルリン放送響、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、シンガポール及びエルサレム響などに客演。BMGにバイエルン放送響との録音(ロリン・マゼール作品集!)があります。

ドリアン・ウィルソン Dorian Wilson
http://www.kojimacm.com/artist/dorian/dorian.html
http://www.youtube.com/watch?v=jiag5LxTna4
http://www.youtube.com/watch?v=GBLdMySuaEg
http://www.youtube.com/watch?v=6G_9in8B3bE

 おおっ、知ってる名前が出た! バーンスタイン最後の弟子の一人で、1989年ニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで入賞、モスクワ・フィル第2指揮者となりました。当時ウィルソンは25歳、アメリカ人としては15年ぶりの客演(あれ、シェフィールド・ラボに録音したローレンス・レイトン・スミスは?)、同オケ史上最年少の指揮者でした。2005-2006年にはベオグラード・フィル首席指揮者を務めました。日本でもいろいろなオケに客演していて、私は2008年5月に大阪フィルを振ったのを聴きました(http://d.hatena.ne.jp/Hayes/20080525/1211723400 )。正直、あんまりいい印象ではなかったですが…。

アラステア・ウィリス Alastair Willis
http://nyphil.org/attend/guests/index.cfm?page=profile&personNum=1025&seasonNum=5
http://www.youtube.com/watch?v=kllTQK31uq4
http://www.youtube.com/watch?v=N5szDEpH9Gw

 ウィリスは2002-2003シーズンからシアトル響レジデント・コンダクター、その前には同オケの副指揮者、他にシンシナティ響及びポップス・オケ副指揮者及び同ユース響音楽監督を務めたこともあります。客演は、シカゴ響、セントルイス響、デトロイト響、ヒューストン響、サンフランシスコ響、ニューヨーク・フィルフィラデルフィア管など。ナクソスから、ナッシュヴィル響を振ったラヴェルの『子供と魔法』やメノッティの『アマールと夜の訪問者』の録音があります。あと、フジコ・ヘミングの伴奏録音もあるみたいですね。

クリスティアン・クナップ Christian Knapp
http://www.opus3artists.com/artists/christian-knapp

 アメリカ生まれで、ニューイングランド音楽院及びロシアのサンクトペテルブルグ音楽院で学んだクナップは、サンクトペテルブルグ・フィル、ニューワールド響、インディアナポリス響などに客演しています。ロサンジェルス・フィル、ニューワールド響、ロシア・ナショナル響、ロンドン響の副指揮者、シアトル響アソシエート・コンダクターを務めていました。録音は、XBOX及びWindows Vista用のゲーム「Halo(ヘイロー)2」のサントラがあります。

アーサー・フェイゲン Arthur Fagen
http://www.naxos.com/conductorinfo/Arthur_Fagen/31578.htm
http://www.youtube.com/watch?v=m33-gluSw9M

 ニューヨーク生まれ、カーティス音楽院でマックス・ルドルフに学び、後にザルツブルグのモーツァルテウムで学びました。2002-03年からドルトムント・フィル及びドルトムント歌劇場音楽監督、客演はチェコ・フィル、ボルチモア響、シカゴ・リリック・オペラ、メトロポリタン歌劇場など。ボルチモア響指揮者コンクールの第1回受賞者でもあります。BMG(ストルツマンやカサロヴァの伴奏)及びナクソス(マルチヌー交響曲全集、リスト:ハンガリー狂詩曲集など)に録音があります。ドイツ人と思われたか、アルトゥール・ファーゲンという表記になっていることもあります。日本では東京フィルに来ているとのことです。


客演したオケの豪華さではアグレストとウィリス、録音ではフェイゲンがリードしてる感じですが、どうなるでしょうね。