2010-10-09 上岡敏之/ヴッパータール ワーグナー・プログラム

10月09日(土) 兵庫県立芸術文化センター 大ホール

ワーグナー
ファウスト序曲
ジークフリート牧歌
−休憩−
ラインの黄金〉より「ワルハラ城への神々の入城」
ワルキューレ〉より「ワルキューレの騎行」,「ヴォータンの告別と魔の炎」
ジークフリート〉より「森のささやき」
〈神々の黄昏〉より「ジークフリートのラインへの旅」,「ジークフリートの死と葬送行進曲」
アンコール:ベートーヴェン:英雄〜第2楽章

 話題のコンビを聴きに行ってきました。CDでは異様に遅いブルックナーなどもありましたが、上岡さん、やっぱり個性的な解釈をする人ですねえ。一番際だっていたのが《ヴォータンの告別》で、楽譜にないはずの全休止を入れたり(それも長い!)テンポを落としたり速めたり、ちょっとストコフスキーとかを思いだすような解釈でした。個人的には、例のラーソーミーレドーというのが何度も繰り返されるのは、刻一刻別れの時が近づいてくる、押し戻すことはできない時の流れの象徴だと思ってるので、テンポをあまり動かさない方が好きなんですが、とにかく《指輪》全曲の中でも屈指の情感あふれる場面なので、こうやりたい気持ちもわかります。他の曲でも、《ジークフリート牧歌》の真ん中あたりがかなり速かったり、《森のささやき》の最初の低弦やクラリネットのなめらかな歌い方がシベリウスっぽかったり、いろいろと面白かったです。

 《指輪》抜粋というから接続曲みたいな感じにするのかと思ってたんですが、一つ一つにコンサート用エンディングの付いた形でした。《ラインの旅》は夜明けのあと「ドッソーミドーーレーミーファミレー」と壮大に主題が鳴る形じゃなくて、それを飛ばしていきなり「ドソーミドーレミドソーミドーレミ」に行く方のバージョンだったり(最近こっちをやる人って少ないような気がします)、《葬送行進曲》は「運命の動機」からではなく、だいぶ前のところからやっていたり、そういうところも個性的でした。

 アンコールは《ローヘングリン》か《マイスタージンガー》あたりかと思いきや、なんとベートーヴェンの《英雄》の葬送行進曲でした。これがまたアレグレットぐらいの速い演奏で驚いたんですが、室内楽的なアンサンブルの丁寧な演奏で、全然せわしない感じはありませんでした。

 オケは、もちろん超一流ではないけれど、いい音を持っているやる気のあるオケと感じました。上岡さんの指揮は、すべてに共感できるわけではないけれど、刺激的だし、自分の信じる個性的な解釈をあれだけ実現してしまっているのはやっぱりすごいですね。