佐村河内さん騒動

 いやー、面白いですね。松本伊代さんはかつて、自分の出したエッセイ集について聞かれて「まだ読んでいません」と答えたそうですが、「現代の松本伊代」、佐村河内守さんの騒動です。ワイドショーとか結構見てます。最初は「大金持ちが道楽で書いた交響曲を世に出すために、役者を雇って佐村河内守というキャラクターを作り上げた」みたいな話なら面白いなとか思ってたんですが、どうも逆で、佐村河内さんの方がプロデューサーだったようですね。ただ「ハンディキャップのある苦悩の作曲家」という世間のニーズを読んで、まんまと大もうけしてしまったという物語はちょっと「トーノ・バンゲイ」的な痛快さがあります。あと、「ヒロシマはまた後付かよ!」っていうのも面白かったです。

映画にするとしたら、ハリウッドならディカプリオ主演でしょうね。アフガンで聴力を失った天才作曲家という触れ込みで、交響曲が大ヒットするが…、みたいな。日本だと、三谷幸喜脚本で、自分は交響曲を書いていると酔った勢いでほらを吹いたら、退くに退けなくなって…みたいな話が面白そうです。佐村河内さんは板尾創路、新垣さんは滝藤賢一あたりでどうでしょう。

と思ったんですが、考えてみれば、「あまちゃん」って、おおざっぱに言うとこういう話でしたよね。佐村河内さんが鈴鹿ひろ美、新垣さんが天野春子。まあゴーストライター自体は昔からある話で、そういえばモーツァルトのレクイエムを匿名で依頼したヴァルゼック伯爵も、依頼した曲を自分の名前で発表するのが趣味だったそうですし。

音楽そのものはいいじゃないかとか、いや音楽ではなくて「物語」を聞いてただけじゃないかとかいろいろ言われていますが、このあたりは難しいですね。ショスタコーヴィチが今のように演奏されるようになったのは、完全に「物語」のおかげなわけですから、われわれショスタコーヴィチ・ファンは全員「物語」の恩恵を受けているわけです。今さら、「音楽は音楽そのものとして聴くべきだ。それ以外は邪道!」なんて、口が裂けても言えません。


佐村河内さん名義の作品(出荷停止。中古は高騰中!)

新垣隆さんのピアノが聴けるCD

新垣さん編曲の「響紋」楽譜